不眠症の病態について
このページは不眠症の病態について解説しているページです。 当院への通院を考えている方は、「不眠症を改善させるページ」に移動してください。
不眠症とは
1-1 不眠症の定義
寝つきが悪い・何度も目がさめる・眠りが浅いといった症状が慢性化している状態。
不眠症とは眠りたいという意思があるにもかかわらず、睡眠時間が短く、眠りが浅くなり身体や精神に不調を来す神経症で、睡眠障害の一つです。
症状としては、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の4つがあります。
1-2 不眠症の一般的な原因
不眠症の原因は多岐にわたりますが、かゆみ・痛み・発熱など身体的な原因によるもの、不規則な生活によるもの、ストレスや精神疾患による覚醒亢進、クスリの副作用などが関与することがあります。
1-3 不眠症の種類
1-3-1 入眠障害: 寝つきの悪さがある状態。
1-3-2 中途覚醒: 眠りが浅くて何度も目が覚める。
1-3-3 早朝覚醒: 朝、寝ていたいのに早く目が覚めてしまう。
不眠症の原因とメカニズム
2-1 身体的要因: 疼痛・かゆみがある、頻尿、呼吸困難などをもたらす病気。発熱のある病気。がんなどの腫瘍など。
2-2 生理学的要因: 時差症候群。交代制勤務。短期間の入院。不適切な睡眠衛生など。
2-3 心理・精神的要因: 精神的なストレス重篤な疾患による精神的ショック。生活環境の大きな変化。うつ病や不安障害、パニック障害などの精神疾患。
2-4 環境要因: 騒音や明るさなどの環境要因。
2-5 薬理学的要因: アルコールやカフェイン、または薬による作用。
不眠症の症状と診断
3-1 症状の種類
眠りつきが悪い、中途覚醒がある、早朝覚醒があるなどの症状が現れます。
3-2 不眠症の診断
「1. 夜間の不眠が続き」「2. 日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」、この二つが認められたとき不眠症と診断されます。眠れないだけで、生活に影響が出ていない場合は、不眠症とは診断がつきませんので注意が必要です。
不眠症は慢性不眠症(慢性不眠障害)と短期不眠症(短期不眠障害)の二つに分けられます。不眠と日中の不調が週に3日以上あり、それが3カ月以上続く場合は慢性不眠症、3カ月未満の場合は短期不眠症と診断されます。
診断は睡眠診断ガイドラインをもとに行うことが望ましいです。
こちらの図表のように、不眠症以外の可能性を除外しつつ、診断を進めていきます。
不眠症の治療法
不眠症を改善させていくためには、原因を特定し、それらの要因を取り除いていく必要があります。主にメンタル面へのアプローチ、生活習慣の改善、身体状況の改善に取り組んでいく必要があります。
睡眠の改善方法については、厚生労働省から健康つくりのための12の指針(改訂版案)というものが出ておりますので、そちらを参考にしましょう。
睡眠12か条
第1条.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
第2条.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
第3条.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
第4条.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
第5条.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
第6条.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
第7条.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
第8条.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
第9条.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
第10条.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
第11条.いつもと違う睡眠には、要注意。
第12条.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
4-1 生活習慣の改善
- 就寝・起床時間を一定にする
起床時間を一定にすることがより重要です。休日にだらだら寝ていると、その日の夜の眠気が弱くなりやすいです。その結果夜型生活へとつながる可能性も高いので、朝の起床時間を一定にしましょう。睡眠時間が足りない場合は、起床時間は変えずに就寝時間を早めるようにしてください。 - 睡眠時間にこだわらない
理想の睡眠時間は個人差があるものです。何時間眠るのが自分の標準睡眠時間と決めるのはいいですが、それにこだわりすぎないようにしてください。○〇時までに寝ないとならない、というようなプレッシャーが逆効果になることもあります。自分の眠気に自然としたがうのが理想です。眠れないときは布団から出るのも一つの方法です。 - 太陽の光を浴びる
朝起きて一番最初に太陽の光を浴びるようにしましょう。睡眠ホルモンのメラトニンは、日を浴びた14~15時間後に分泌が増加します。自然と眠気が出るようにするためには、まずは日光浴です。ある程度の明るさがあれば大丈夫なので、レースのカーテン越しでも大丈夫です。まずは、部屋に日の光を入れましょう。 - 適度の運動をする
ほどよい肉体的疲労は心地よい眠りを生み出してくれます。運動は午前よりも午後に、軽く汗ばむ程度の運動をするのがよいようです。激しい運動は交感神経を興奮させてむしろ寝つきを悪くするため逆効果です。短期間の集中的な運動よりも、負担にならない程度の有酸素運動を根気強く継続することが効果的です。
4-2 寝室環境の改善
ベッドやマットレスだけではなく、寝室の環境を見直してみましょう
- 寝室の清潔さ
寝室が汚れており、ほこりが舞っているような環境だと、自然と呼吸が浅くなり、睡眠の質が低下します。 - 部屋の温度・湿度
季節によって理想の温度は変わります。夏場は26℃、冬場は19℃程度が理想とされています。湿度は通年50~60%程度が理想です。夏場は湿度が上がりやすいため注意が必要です。 - 部屋の明るさ
基本的には暗い環境で寝るのが理想です。明かりが必要な場合でも、直接顔に光が当たらないようにするなどの工夫が必要です。 - 部屋の騒音
ある程度静かな環境の方が望ましいです。もし音が気になる場合は、耳栓などの利用もおすすめ。
4-3 薬物療法
睡眠導入剤、抗不安薬、抗うつ薬などが使用される。睡眠薬についてのネガティブなイメージが先行してありますが、正しく服用すれば過度の心配はありません。最近では、副作用の少ないいい薬も開発されているので、危機的な状況であれば、積極的に活用することをお勧めします。
しかし、市販薬に関しては治療効果は乏しく、薬を考えるのであれば、医師の指示のもとに活用することがおススメです。
4-4 カウンセリング
ストレスや心理的な問題に対処するための心理療法です。ストレスをどのようにコントロールするかということが重要となります。仕事をしていると、ストレスを与える場面や人を避けることが難しいケースも多いです。そのような場合、自分の認知を最適化していくことで、ストレスをある程度コントロールできるようになることが理想です。専門家のカウンセリングにて、認知行動療法に取り組むことは効果的です。
よくある質問
Q: 不眠症は遺伝しますか?
A:不眠症には遺伝的要因も関与する場合がありますが、生活習慣や環境も重要な役割を果たします。
Q: 自分で不眠症を改善する方法はありますか?
A: 生活習慣の改善やストレス管理、睡眠ハイジーンの向上など、自己ケアの方法があります。
不眠症に関する最新研究と進歩
6-1 睡眠障害のメカニズムに関する研究
睡眠障害
6-2 薬物療法の新展開
不眠症治療のための新しい薬剤や治療法の研究が進展しています。副作用のリスクを最小限に抑えながら、効果的な治療法を模索しています。
6-3 睡眠環境の改善に関する研究
環境要因が睡眠に与える影響や、睡眠環境の最適化に関する研究が行われています。音や光の管理、寝具の選定などが重要な要素として研究されています。
まとめ
7-1 不眠症管理の総括
不眠症は多様な原因によって引き起こされる症状であり、生活習慣の改善や専門家の助言を得ることで管理できる状態です。
7-2 いつ専門家の診察を受けるべきか
睡眠障害が日常生活に支障をきたす場合や、自己ケアが効果を上げない場合は、専門家の診察を受けるべきです。
7-3 まとめ
不眠症は生活習慣や心理的要因などによって引き起こされる症状であり、適切な治療法や生活習慣の改善によって管理することができます。専門家の助言を得ながら、健康な睡眠環境を整えることが大切です。
引用文献・参考文献
三島和夫.”不眠症”.厚生労働省e-ヘルスケアネット.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html#:~:text=%E5%80%A6%E6%80%A0%E6%84%9F%E3%83%BB%E6%84%8F%E6%AC%B2%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%83%BB%E9%9B%86%E4%B8%AD%E5%8A%9B%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%83%BB%E6%8A%91%E3%81%86%E3%81%A4%E3%83%BB,%E7%97%87%E3%81%A8%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82