周産期とは、出生前後の期間のこと。
ICD-10によると、妊娠22週から出生後7日未満と定義されています。
ICDー10
International Statistical Classification of Diseases and Relaed Health Prblemsの略で、日本語では「国際疾病分類」と呼ばれることもあります。
世界保健機構が死因や疾病の国際的な統計基準として公表している分類である。
Wikipedia
周産期には妊婦さんの体にさまざまな変化が起こります。
その中でも、腰痛に悩む妊婦さんの声がたくさん届きます。
今回は妊婦さんの体の変化と、体の悩み、そして楽眠整体ではどのようなアプローチを行なっているのかを快悦していきたいと思います。
周産期の体の変化
妊娠から出産、そして産後の期間を指す「周産期」は、女性の体にとって大きな変化が訪れる特別な時期です。
この段階での体の変化には、ホルモンの変動や体重の増加、メンタルヘルスの変調などが含まれます。
これに伴って適切なケアをすることが、母子の健康を保つために非常に重要です。
妊娠期の体の変化とケア
妊娠期は体にさまざまな変化をもたらします。
最も顕著な変化の1つは、体重の増加です。
妊娠中の体重管理は、母体と胎児の健康を守るために重要です。
バランスの取れた食事と適度な運動は、体重を健康的にコントロールするのに役立ちます。
また、おなかがどんどん大きくなるにつれて、姿勢にも注意が必要です。
おなかが大きくなることで、体の重心の位置が変わり不良姿勢になりやすくなります。
骨盤の前傾や背骨のカーブなどが変わることで、腰痛や肩こりが起こりやすくなります。
そして、リラキシンというホルモンが分泌される期間でもあります。
リラキシンは、妊娠中から産後半年間分泌されると言われており、骨盤の靱帯を緩ませ、骨盤を開きやすくする効果があり、お腹の中に赤ちゃんを納めやすくしたり、出産を円滑に進める為に重要な役割をしています。
妊娠期の適切な姿勢を保つために、ヨガやストレッチなどの軽い運動を取り入れることを検討してみましょう。
さらに、妊娠線予防も重要です。
おなかや太ももの皮膚は急激な伸び縮みによって妊娠線ができやすく、特に初産婦にとって注意が必要です。
適切な保湿やビタミンEを含むクリームの使用、十分な水分摂取などが妊娠線予防に役立ちます。
出産直前の体の変化とケア
妊娠後期、出産が近づくにつれて、お腹の張りやむくみなどが現れることがあります。
お腹の張りは子宮が収縮している兆候であり、無理な動きを避けつつリラックスすることが大切です。
むくみに関しては、足を上げて休む、軽いストレッチをするなどして血液の循環を促進しましょう。
出産直前ではお腹も大きくなり転倒のリスクも高くなります。
アメリカの調査によると、働いている妊婦さんの25%に転倒した経験があるという報告もされています。
体の変化によって、今まででは考えられなかったような転び方をすることもありますので、特に注意しましょう。
出産が迫ると、マタニティバッグの準備も忘れてはいけません。
必要なものを前もって用意しておくことで、出産後の忙しい日々をスムーズに過ごすことができます。
おむつや赤ちゃんの衣類だけでなく、自分自身の快適さを考えたアイテムも忘れずに用意しましょう。
出産後の体の変化とケア
出産後も体の変化は続きます。
体重は元に戻るまでに時間がかかることがあり、焦らずに健康的な方法で戻していくことが大切です。
ただし、無理なダイエットは控え、授乳中の栄養摂取に気を配りましょう。
バランスの取れた食事が母乳の質にも影響を与えることを忘れずに。
さらに、出産後の運動も検討しましょう。
軽いストレッチやウォーキングから始めて徐々にエクササイズを増やしていくことで、体力や筋力を回復させることができます。
ただし、専門家の指導のもとで行うことをおすすめします。
また、育児と自己ケアのバランスも大切です。
育児に追われる中で自分自身を大切にする時間を持つことは、心身の健康を保つために不可欠です。
家族やパートナーとの協力体制を築きながら、自分の時間を確保する方法を考えてみましょう。
パートナーや家族とのコミュニケーション
周産期の体の変化やケアは、母親だけでなくパートナーや家族にも影響を与えます。
パートナーに理解を求め、協力体制を築くことは大切な一歩です。
母親の状態やニーズを理解し、サポートを提供することで、より良い周産期を過ごすことができます。
コミュニケーションが円滑であれば、家事や育児の分担もスムーズに行えるでしょう。
母親がリラックスし、十分な休息をとるためには、家族全体のサポートが不可欠です。
感謝の気持ちを伝え合いながら、共にこの特別な時期を楽しみましょう。
身体機能から見る周産期
周産期の身体機能で注意が必要なのは、リラキシンにより靭帯が緩みやすくなっていること。
お腹が大きくなることによって、体の重心の位置が変わり、普段とは異なる姿勢を取りやすいことです。
それらが原因で、体の不調が生じます。
しかしながら、根本的な原因を取り除くことはできません。
なので、そのような状態であると留意しつつ、適切な姿勢をとる、体のケアを取り入れるといった対策が必要となります。
骨盤は複数の骨が組み合わさって、靭帯により強固に固定されることで一つのユニットとして機能します。
骨盤には筋力を発揮する際の、衝撃を和らげる作用があります。
しかし、骨盤の安定感が不足してしまうと、大きな力を発揮することができなくなってしまいます。
それは、ちょっとつまずいたときに、一歩足を出すというようなことや、手で何かにしがみつくというような、骨盤から離れた関節においても当てはまります。
なので、力が発揮されにくいという点からも転倒のリスクは高まります。
また、骨盤の不安定性は、長時間不良姿勢をとることにより、骨盤がずれることで、慢性的な腰痛を引き起こします。
下の図は、骨盤の図です。
青い部分と白い部分の骨は、それぞれ別の塊で、靭帯によって強固に固められています。
動いたとしても数ミリ程度の関節ですが、妊娠中には動きやすくなると言われています。
なるべく不良姿勢を避けることで、骨盤の関節のずれを防ぐことができるでしょう。
また、子宮が大きくなることによって、元々お腹にあった内臓は、さらに上方に押し上げられます。
その為、肋骨が左右に大きく開く状態となります。
それ自体は何ら問題はありませんが、肋骨の動きが悪くなることがあります。
肋骨の動きが悪くなると、背中の張りや腰痛が出現したり、深呼吸がしにくくなり、腹筋が働きにくくなります。
腹筋が働きにくくなることで、さらに腰部への負荷が大きくなるというような悪循環に陥ってしまいます。
なので、肋骨を含む胸郭の柔軟性を保つことが重要となります。
妊婦さんの姿勢と歩行
お腹が大きくなってきた妊婦さんは今までの状態とは大きく異なります。
中でも転倒はお腹の赤ちゃんにも大きな影響を与えます。
米国の転倒調査によると、働いている25%の妊婦に転倒歴があるという報告がされています。
この数字は、65歳以上の高齢者の転倒率に匹敵する数字です。
日本においても、転倒率は19.9%と決して低くない割合となっています。
なぜそれほど転倒しやすくなってしまうのでしょうか。
それは、
①リラキシンにより骨盤の安定性が低下する事。
②お腹が大きくなることにより、体の重心や姿勢が変化すること。
③胸郭の可動性が低下し、バランスをとりにくくなること。
が原因として考えられます。
①骨盤の安定性低下
骨盤の安定性が低下するとどのようなことが起こるのでしょうか?
一般的には、骨が歪んで姿勢が崩れたり、痛みが出たり、太って見えたりというようなイメージがあるようです。
その通りのこともありますが、もう少し解剖・生理・運動学的に掘り下げていきたいと思います。
骨盤という部位は、複数の骨が組み合わさって構成されています。
骨が輪っかのように組み合わさっている様子を『骨盤輪』という言葉で表現されています。
輪っかのように構成されていることにより、骨盤に加わる力が、骨盤内にぐるっと回され、上手に衝撃を吸収することができます。
人間が大きな力を発揮する時、
例えば重たいものを明日ような場面では、物に対して力が加わると同時に、自分の体にも力が跳ね返ってきます。
いわゆる、作用反作用の法則ですね。
その跳ね返ってくる力を上手に吸収してくれるのが、骨盤の働きとなります。
骨盤が緩んでくると、そのような衝撃を受け止める力が弱ってきます。
そうなると、大きな力を受け止めきれずに身体のどこかしらに痛みが生じたり、
もしくは、体を痛めないように、自分の力が発揮されないように、制御されたりします。
実際に妊婦さんの筋力が低下するという報告もされています。
この筋力の低下は、もともとあった筋力が、脳からの姿勢制御により発揮できなくなるという状態ですので、
一般的な筋トレのような、筋肉の量を増やすような方法では解決されません。
筋肉増やしても使えない状態だと意味ないですよね。
また、骨盤の緩みは別の問題も抱えています。
それは、関節のズレが生じやすいという問題です。
特に骨盤を構成する仙骨と腸骨の間の仙腸関節は、不良姿勢の影響によってずれやすくなります。
仙腸関節は体の状態を把握する為にも重要な関節で、感覚受容器という体の状態を把握するセンサーのようなものがたくさんあります。
なので、ちょっとした関節のズレの刺激を拾って、脳に痛みの刺激を伝えるわけです。
関節がズレることで、痛みの原因となりやすく、生活面にも大きな影響を与えるようになります。
②重心の変化
お腹が大きくなることにより、体の重心が前になります。
そのままの姿勢だとお腹の重さで前に転んでしまいますので、背中や股関節を後ろの方に移動させるような姿勢制御を行います。
体を後ろの重心にすることで、バランスをとる力が弱ります。
転倒にも繋がりやすいですし、腰背部への過剰な負担となりやすいです。
腰痛の原因となりますので注意が必要です。
③胸郭の可動性低下
妊娠により、子宮が大きくなることで、お腹の中の臓器が上に押し上げられます。
臓器が上に上がることにより、肋骨が開いてきます。
それ自体は問題がないのですが、開いてしまうことにより、肋骨の動きが制限されやすくなります。
制限が固さとなった時に、胸郭の動きは悪くなり、呼吸が浅くなったりバランスを取りにくくなってきます。
妊婦さんの抱えるリスク
先ほどまででも解説したように、特に転倒のリスクが高まります。
それに注意して頂くのはもちろんですが、それ以外にも医学的なリスクに注意が必要です。
切迫早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、胎盤早期剥離など、母子の生命に関わるような病態も多いです。
その為、妊娠期間中には適切なリスク管理が必要となります。
基本的には妊娠の定期検診により、栄養状態や血圧などのバイタルサインの確認を行なっていきます。
基本的には、妊娠初期から23週までは4週間に1回。
24週から35週までは2週間に1回。
36週から出産までは週に一回の検診が推奨されています。
定期検診においてフォローされていますが、何かおかしいと感じた時には、早めに医療機関を受診することをお勧めしています。
まとめ
周産期は女性の体にとって大きな変化が訪れる特別な時期です。
妊娠期から出産直前、そして出産後にかけての体の変化には、適切なケアが求められます。
バランスの取れた食事、運動、専門家のアドバイス、そして家族のサポートを通じて、健康な周産期を過ごしましょう。
大切な時期を心地よく過ごすことで、母子ともに幸福な未来を迎えることができるはずです。
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